幸せに、元気になる体質別薬膳
 
その1;南京中医薬大学附属病院不妊症の名医を訪ねて

 2003年と2005年の2回、南京中医薬大学附属病院に不妊症の名医として名高い夏 桂成(かけいせい)先生の研修を受けに行きました。南京中医薬大学附属病院は新しく作りかえたばかりで、これが病院!というくらい近代的な立派な建物でした。
玄関ホールには2mくらいある大きな水槽に美しい熱帯魚がひらひらと泳ぎ、緑豊かな大きな観葉植物や盆栽までが廊下には並べられ、エスカレーターで各階に移動できるようになっていました。

 中国は西洋医学と中国医学(日本でいう漢方)があり、西医学と中医学といっています。この二種類の大学と病院があり中医薬大学とは中医学と中医薬学(漢方薬)の専門大学です。患者さんは好きなように病院を選んでいますが、一般的には風邪など軽いものと慢性病は中医の病院、重い病気は西医の病院と分けているようです。
 
 中医専門病院でも必要なら血液検査、心電図、レントゲン検査もします。
また日中友好病院など一つの病院が中西医合体といって中医学と西医学両方をやっている病院もあります。このような病院では医師が患者さんに合った医学を選んで受けさせています。以前研修した病院の心臓病の病棟で聞いたところでは、手術は西洋医学で行い、手術が終わったら中医の病棟で漢方薬を服用し、瘀血を取る活血薬(丹参など)の配合された煎じ薬を飲む、という風に一番患者さんによい、と思われる治療法を医師が選択していたのが印象的でした。

 さてこの南京中医薬大学は北京中医薬大学と同格の中国では最高の中医薬大学です。
 ここでは特に中医学不妊症に対応していることで有名で、基礎体温を細かく見てホルモンの動きを中医学的に見ながら漢方薬を選び、体調を整えて妊娠に持っていく夏 桂成先生独特の方法をとっています。
 月経期、低温期、排卵期、高温期と分け月経期は早くきれいに月経血が排出されるような活血剤、低温期は卵を作る期間なので、体温が変動せず、よい卵が作られるよう補陰剤(六味丸など)排卵期は卵子がスムーズに飛び出せるよう理気活血剤、高温期はイライラすると体温は変動するので、変動しないように加味逍遥散や、また高温を保てるよう人参などの補陽剤を加えるなど西洋医学の知識と中医学の知識を見事にドッキングさせたやり方で魅了されました。

 ご高齢なのにひとりひとりににこやかに説明し、診察室は次の患者さんもそのまた次の患者さんも隣に座って話を聞いているという風で、プライバシーも何もない感じですが、患者さん達は自分のことで精いっぱいで他人の事など気にも留めてないようでした。中国の研修でいつも感じるのは医師がえらくなればなるほど威張らない、ということです。名医が仏様といわれるのもうなずけます。
 
  私たちは午前中一杯で30人ほどの患者さんを先生と一緒に見、何故この薬を使うかなど説明を受け、カルテを写し緊張で半日でへとへとでした。午後はまた先生の講座を受け、夜は午前中みた患者さん一人一人の中医学的な考察をまとめる作業が毎日続きました。
 最後に学校の先生方と表彰式が行われ、日本では食べられないようなおいしい中華のごちそうを堪能しました。私の横には南京中医薬大学附属病院院長の劉先生が座られ、東大に留学されたという日本語と、私のろくにできない中国語で会話をし、「今度いらっしゃるときはもっと中国語を勉強してきてください」と言われ冷汗がでる思いでした。

 そのころは前総理大臣の小泉さんの靖国神社参拝で中国ではデモが起きていたころでした。特に南京は南京大虐殺の地元で観光客はかならず虐殺のあった場所に連れていかれます。この時期南京に研修に来ること自体危ぶまれたほどでした。しかし劉院長があいさつで「今、日中の間ではいろいろなことがあります。しかし今回の研修を拝見していて、その真剣さに感激しました。政治的にはいろいろあっても中医学を学ぶ姿が本当の日中友好です!」と話され、日本人として心から嬉しく感じました。

 また夏先生は政府から省にたった一人という大きな功労賞を受け私たちが研修していた日に、表彰式が北京人民大会堂で行われることになった、と急に知らせがあったようでしたが、私たちの約束が先だから、と出席を断られたと後でお聞きし、一同すっかり恐縮してしましました。
 私たちの心ばかりの感謝のしるしにと花束を差し上げたところ大変喜ばれ、中国の人の約束を重んじる気風を垣間見た思いで、心に残る思い出となりました。
 
 
その2;雲南省中医薬大学附属病院見学

 今年の7月、中国の雲南省中医薬大学附属病院で皮膚科の研修にいってきました。この中に名医館(写真参考)といって名医が集まって診療している病棟があり、私はここの皮膚科の名医について実際に患者さんを診療するところを見学する、素晴らしい機会を得ることが出来ました。名医の先生に診察料は通常の4倍です。しかし患者さんは順番待ちをして前日の午前3時で締め切りという人気ぶりです。実際診察室の中にまで次の患者さんたちは入ってきていました。(写真参考)

 名医の劉先生は温厚な人柄で笑顔を絶やさず、患者さんのからだ全体の皮膚をすべて丁寧に見て、虫眼鏡まで使ってごらんになっていました。
  そして皮膚の症状を中医学の言葉で「風熱(ふうねつ)、湿熱(すつねつ)、血熱(けつねつ)だから、清熱涼血(りょうけつ)、袪風(きょふう)で治しましょう。薬は涼血薬、利湿(りしつ)薬、袪風薬を使いましょう」と患者さんに丁寧に教えてあげていました。
中国の方はこのような中医学の言葉を常識として知っているようです。

 そして食べ物はアトピーや尋常性乾癬の方には「肉、魚、卵、牛乳は駄目です。特に牛肉とハム、ソーセージは駄目です」と全員におっしゃっていました。冗談のお好きな先生で「水の中にいない魚ならいいですよ」「????」「木魚です」「!!!!」
私のお店のお客様にこの話をしまして「何のさかなか分かります?」しばらく考えてから、張り切って「酒の肴(さかな)!!」と答えられたのには大笑い。
 にきびの方には全員に「甘いもの、チョコレート、脂っこいもの、おいしいものは全部駄目」びっくりしていましたが反論するかたは一人もいませんでした。なにしろあちこち回って治らなかった方ばかりで最後の望みの綱でいらしたかたばかりですから。

 顔を洗うときは米のとぎ汁で洗いなさい、とのこと。そういえば昔日本でもぬか袋でからだを磨いたものです。
米のとぎ汁には利湿効果があるのでジクジクした人や油っぽい肌の人には効果があるとのことです。漢方薬を煎じる時も、米のとぎ汁で煎じた方が効果があり、またもちろん栄養もあります。
院長始め他の先生方も「食べ物が大事です。食べたものが今の症状を起こしているのです。食べものをよくすれば早く良く治ります。守らなければ治りません」と一様にうなずいていらっしゃいました。
 
  雲南省は日本と気候が似ており、この日も大雨が降り、雷が鳴って、近くに落ちましたが、驚いている人はだれもいませんでした。湿気が多いので湿熱(ジクジクしたり赤く皮膚が腫れている状態)の体質の人が多く、日本も同じですので大変参考になりました。
顔つきも北京や、上海の人より日本人に似ていて、性格も穏やかです。街はブーゲンビリヤが咲き乱れ、きゅうりよりバラの花束の方が安い、ということでした。


植松光子

ウエマツ薬局 薬剤師 東京理科大学卒業
国立北京中医薬大学日本校卒業
中国政府認定 国際中医師試験合格
埼玉県知事より薬事功労賞授与

著書 「アトピーは中医学と薬膳で治す」

 
 
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