頭痛、めまい、シビレは、神経内科にかかる患者さんの三大症状です。中でも「めまい」は、突然発症することが多く、嘔気、嘔吐を伴いますので、急性期には患者さんは動くことすらできず恐怖感におそわれます。
しかし、本当に恐いめまいはめったにありません。
 今回は、神経内科医の立場から「めまい」にっいてお話したいと思います。

(1)「めまい」と「めまい感」
 「めまい」には、天井がグルグル回る典型的なものと、フワーッとしたり、体がフワフワ、ふらふらするいわゆる「めまい感」とがあります。どちらにせよ、主として耳の奥にある、体の平衡を調節する三半規管のバランスがくずれた状態で起こりますが、回転性のものは、耳の中の原因(末梢性)であることが多く、いわゆる「めまい感」は、脳の血流(中枢性)あるいは体全体の原因(全身性)によって起こることが多いと思います。めまいでは、まず全身状態をチェックします。
特に心臓・血管系で、高血圧、(起立性)低血圧、不整脈の有無が重要です。他に貧血、糖尿病の有無や処方中の薬剤の影響も考えます。

(2)メニエール病
 「めまい」というと、すぐメニエール病と判断されがちですがそうではありません。
メニエール病には、以下のようにはっきりとした厚生省の診断基準があります。
 @同転性めまい発作を反復すること
 A耳鳴、難聴などの蝸牛症状が反復、消長すること
 B以上の症候をきたす中枢神経疾患、ならびに原因既知のめまい、難聴を主訴とする疾患が除外できること
 つまり、回転性で、耳鳴・難聴を伴って発作性におこるもので、嘔気、嘔吐を伴い、数分ないし数時間持続します。女性に多く、発症年齢は30代後半から40代前半にピークを持つ山型で、人口10万人当たりに15〜18人、つまり1万人に1〜2人と言われており、そんなに多いものではありません。神経内科では、典型例を診ることはほとんどありませんが、これは患者さんが、まず耳鼻科を受診することが多いからだと思います。原因は内耳の内リンパ水腫といわれ、治療に難渋することはありますが、命に関わる病気ではありません。

(3)発作性頭位めまい
 よくあるのは発作性頭位めまいです。これは頭の位置を変えたときにおこるめまいで、耳鳴・難聴は伴いません。朝トイレに起きようとして、頭を持ち上げたとたんに回転性のめまいが出現しま這うようにしてトイレから戻っても、寝返りをしたり、頭を少しでも動かすと目がまわり嘔吐を縦り返します。そのため、患者さんはじっと寝ていて、少し落ち着いてから来院します。この病気も三半規管の異常により生じますが、幸いなことに、多くは「良性」で、白然の経過でも数日から一週問程度で治ります。多くは再発せず、脳のCTやMRI検査で異常は認められません。

(4)椎骨脳底動脈血行不全
 お年寄りのめまいの多くは、動脈硬化による脳の血流障害により起こりますこ前の骨(頚椎)の中を通る血管が椎骨動脈で、頭の中に人ってから合流して脳底動脈となります。この血管系が三半規管の血流に関係しています。今は、MRI検査で脳の血流障害の程度や血管の様子を見ることができるようになりましたので、それらの結果から診断し、血流をよくする薬で治療できます。

(5)頚椎症(頚性めまい)と肩こり
 頚椎の異常もめまいと関係があります。多いのは変形性頚椎症で年齢的なちりです。変形した頚椎が、前に述べた椎骨動脈を圧迫することにより血流の変化をきたしめまいを起こします。この場合・寝返りなど首の位置によってめまいが変化することが特徴です。
 また、頚椎のまわりにある神経組織(交感神経)が刺激されて、頭痛、めまい、視カ障害、耳鳴りなどを起こすことが知られています。これはムチ打ち損傷などで起こりますが、頚椎症もない単なる「肩こり」でも起こり、これで悩んでいる人はたいへん多いと思います。筋肉を弛緩する薬や血流をよくする薬で治すことができます。

(6)貧血と自律神経失調症
 女性の場合、貧血によるめまいも多いものです。若い女性は、生理だけでなくダイエットなどにより鉄が欠乏し、中年以降では子宮筋腫などで消耗して貧血が起こります。これらは徐々に悪化しますのでなかなか気づきません。また、頭痛、めまい、肩こりなどが起こると、よく「更年期障害」や「自律神経失調症」と自己判断してしまう人がありますが、貧血や頚椎症が隠れていることがありますので、ちゃんと診断を受けて治療することが大事です。

(7)薬によるもの
 めまいというと、すぐ頭の中を心配しますが、薬によるものも多いと思います。日ごろ薬を服用している場合は注意しなければいけません。特に高血圧と糖尿病が重要です。知らぬ間に血圧が下がりすぎたり、低血糖になっている場合があります。今は、自宅で血圧や血糖の測定が簡単にできるようになりましたので、自己管理ができます。

(8)心因性めまい
 ストレスによる心身症、うつ状態などでもしばしばめまいを訴えます。しかし、前に述べたように、単なる肩こりでもめまいは起こります。ストレスがかかったり、運動不足になれば誰でも肩はこってきます。ですから、すぐに心身症やうつ病になったと思わない方が良いと思います。適切な治療によりよくなるものです。

(9)脳腫瘍・脳出血・脳便塞
 これらが、いわゆる「恐いめまい」ということになります。耳の奥、小脳橋角部という場所に腫瘍ができるとめまいがしますが、突然発症することはなく、ふらつき感から始まり徐々に悪化します。幸いなことに、多くは良性の腫瘍ですから緊急手術をする必要はなく、脳外科で治すことができます。突然のめまいでおこる脳出血・脳梗塞は危険ですが、普通はめまい以外に「ろれつが回らない」など他の神経症状を伴ないますので、めまいだけの場合には、すぐに心配ということはありません。今は、これらはCTやMRI検査で簡単に診断できますので、いたずらに恐がる必要はないと思います。

(10)まとめ
 以上のように、めまいの原因はたくさんありますが、命に関わる重篤なものは非常にまれですので、まずは心配しないことが肝心です。また、一つだけの原因で起こるとは限りませんので、いろいろな診療科で診てもらうことも良いと思います。まずは、耳鼻科、神経内科あるいは脳外科で診てもらい、CTやMRI検査を受けて安心することをお勧めします。

得丸幸夫先生 略歴

昭和 53年 3月  千葉大学医学部卒業
  53年 7月  千葉人学医学部付属病院 研修医
  55年 10月  千葉県救急医療センター神締内科 勤務医
  56年 4月  国保松戸市立病院神経内科 勤務医
  57年 10月  千葉大学医学部付属病院神経内科 医員
  59年 10月  千葉労災病院神経内科 勤務医
  62年 4月  千葉大学神経内科 助手
平成 6年 9月  川越市にて内科・神経内科 開業
       千葉大学医学部神経内科 非常勤講師
       現在に至る
   
資格
医学博士 日本神経学会専門医 日本内科学会認定内科医
日本プライマリ・ケア学会認定医 日本医師会認定産業医
日本体育協会公認スポーツドクター
URL:http://www.tokumaru.info/index.html
 
 
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